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企業財務レポート「波乱の年明け、闇夜と夜明けに備えた事業計画を立てよう 」

波乱の年明け、「闇夜」と「夜明け」に備えた事業計画を立てよう

解説:日本経営ウィル税理士法人
公認会計士 西村 公宏

不確実な2020年の影響が残る年明け

2020年は「不確実」が世間を支配した1年でした。1月の時点では、オリンピックイヤーとしてお祭りムード漂う1年が待っていると信じていた人が大半だったと思われます。

しかし現実は感染症が世界を席巻し、かつてない行動制限を強いられた試練の1年となりました。新型コロナウイルスとの「戦争」状態だった年とも言えます。

この非常事態は2021年となった今も継続しております。

非常事態における事業計画の策定

1月は多くの人が、1年の計画を立てる時です。3月決算の会社も、新年度に向け来期の事業計画を立てていく時期となります。

ただ、このような非常事態における事業計画策定は困難を伴います。それは、事業に影響を与える外部環境がどのように変化していくのか、確実な予想が極めて困難であるためです。

だからと言って、事業計画策定を放棄してよいといえるでしょうか。それは、NOと私は断言します。なぜならば、事業計画は一寸先は闇の状態で、奈落の底に落ちないようにするリスク回避機能も含まれているからです。

今回は、このような非常時に立てるべき事業計画についてご説明いたします。

資金繰りの計画が極めて重要

極めて厳しい事業環境の際、一番注意しなければならないのは、倒産リスクです。特に注意すべきなのは、預金残高です。どれだけ手厚い純資産があろうとも、利益が出ていたとしても、資金がなくなり正常な支払いができなくなると倒産リスクが大幅に高まります。

そのため、損益の計画より資金繰りの計画が極めて重要となります。毎月の支払・収入額を予測し、資金不足が生じないか検証する必要があります。資金不足が見込まれる場合は、早い段階で資金調達・つまり借入や固定費削減、赤字事業の撤退等を行い、資金不足の見通しを回避する必要があります。

また、資金繰り計画は極力悲観的に見積もる必要があります。資金不足による倒産の可能性を極力下げる必要があるからです。全社的な取り組みむなしく業績が計画を下回った結果、資金が不足してしまっては目も当てられません。

資金繰り計画はあくまでも「守り」の計画であるため、チャレンジングな計画は必要ありません。悲観的に計画し、最悪の事態になったとしても、資金が常にあるように計画しましょう。

損益計画で従業員のモチベーションを維持

一方で、従業員に向けた損益計画まで悲観的にした場合、従業員のモチベーションに悪影響を与える可能性があります。新型コロナウイルスの影響とはいえ、本来従業員の努力で超えられる困難も「コロナのせい」で責任転嫁して、業績が落ちてしまっては本末転倒です。

倒産回避目的の守りの資金繰り計画とは別に、従業員のモチベーションを確保できる損益計画を従業員に見せる必要があります。

Plan B「予備計画」で、転換期に素早い行動を

不確実性の高い時に忘れてはいけないのは、悲観的な資金繰り計画、闇夜の中でも成長を目指す損益計画とは異なるもう一つの計画の策定です。

それは、外部環境が好転した場合に、素早く攻めに転じる計画です。人間は「直線本能」や「ネガティブ本能」に支配されがちです。現状の悪い事態は今後も続き、むしろもっと悪化してしまうのではないかという思いです。

ですが、明けない夜はありません。いつかはきっと「夜明け」がやってきます。そして、「夜明け前」が一番「暗い」のです。

実際にワクチン開発等明るいニュースも出てきており、近い将来、新型コロナウイルスを克服する時がやってきます。その時に、迅速に攻めの計画が出来るよう、予め攻めの計画を立てておくのです。

これが「予備計画」です。転換期には常にビジネスチャンスがあり、早期につかめると先行者利益として大きな利益を確保できます。

ただし、先行者利益を確保できる意思決定が出来る瞬間は一瞬です。迅速な意思決定ができるように企業としての「心の準備」である予備計画策定はとても大事になります。

複数の事業計画で、安全性と効率性の両立を目指

ひとえに「事業計画」と言ってもその目的によって、立てるべき「計画」は大きく変わります。不確実性が高まるほど、「事業計画」を目的別で複数用意し、様々な状況を乗り越える柔軟さを身に着けていかなければなりません。

そして、これらの計画を混同して利用するとかえって害悪にもなりえます。「予備計画」で資金繰りの見通しを立てても倒産リスクは回避できません。また、悲観的な資金繰り計画では企業の成長力や収益力が落ちてしまいます。計画を立てる際は、その目的が何かを十分に考えたうえで、数値の見積もりをしていく必要があります。

私たちは事業の現況に合わせて、今一番必要な計画が何かを見極めたうえで、目的別の計画を立てるノウハウを持っております。

この「闇夜」の時代で、将来を照らすともしびたる「事業計画」なき行動で路頭にまようようなことがないよう、私たちはお客様を全力でサポートしております。

事業計画策定にお悩みの場合は、是非とも私たちにご相談ください。

レポートの執筆者

西村 公宏(にしむら きみひろ)
日本経営ウィル税理士法人
公認会計士

2006年公認会計士試験合格後大手監査法人に入社、上場企業等の会計監査業務に従事する。2010年公認会計士登録。2017年にウィル税理士法人(現:日本経営ウィル税理士法人)に入社し、上場企業から零細企業まで幅広い企業の税務・会計顧問業務に携わる。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

  • 事業形態 事業・国際税務
    相続・オーナー
  • 種別 レポート

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